ベン・シャーン(1898-1969)について
8歳の頃、リトアニアから一家でニューヨークに移住。14歳の頃から石版工の徒弟として働きながら、夜学に通い、さらには奨学金を得て大学で学ぶ。20代は本格的に画家を目指してヨーロッパとアメリカを往来する生活を送る。30代半ばになり発表した「サッコとヴァンゼッティ・シリーズ」(マサチューセッツで起きた強盗殺人事件の容疑をかけられた2人のイタリア移民が、不十分な証拠のみで処刑された事件を題材に)で注目を集める。他にも1954年のビキニ環礁での水爆実験の被害を受けた第五福竜丸を題材にした作品など、社会的な事件を扱った作品で知られる。一方で、1930年代にはニューディール政策の一環で、アメリカ国内各地で制作された壁画の制作に参加。さらにグラフィック・デザインにおいても数多くの作品を残している。その魅力は「社会的メッセージ性」にのみ留まるものではなく、味わいのある手描きの線描や色面で構成される画面は、後のデザイナーや画家達を多いに刺激し、特に1950~60年代に日本国内のグラフィック・デザインにおいて、その影響は顕著に現れています。丸沼芸術の森ではベン・シャーンの素描、油彩、テンペラ、ポスターなど200点以上を所蔵しています。
《ほんとうに偉大な人たちを私は忘れない》について
1960年代アメリカでの大きな社会変動をもたらした、公民権運動についてもシャーンは多くの作品を残しています。この作品では、平和的に公民権を求めていたものの、反対勢力により命を奪われた人々の名前、そしてイギリスの詩人スティーブン・スペンダー(1909-1995)による同名の詩から題名が取られ、その3節が書き込まれています。
《ほんとうに偉大な人たちを私は忘れない》
I think Continually of Those Who Were Truly Great
1965年 水彩・セリグラフ、紙 65.4×50.7cm
©Estate of Ben Shahn / VAGA, New York & SPADA, Tokyo, 2008